2015年07月20日

鶴岡文化会館

ぼくらは鶴岡に育ち10代から鶴岡文化会館で多くの音楽を聴いて育った。とくに当時、「労音」の活動は活発で結構売れっ子の有名なアーチストのライブが頻繁に行われ、地方に住んでいてもそこそこ卑屈にならずに済む程度に時代を肌で感じることが出来た。フォークもJAZZもたくさん聴いた。大枚をはたいて東京に出掛けてはじめて聴くことが出来るコンサート以外は鶴岡でそこそこ聴くことが出来た。鶴岡文化会館は庄内の若者の憧れの場所であり文字通り文化を吸収する場所でもあった。






入札不調などのニュースを見るにつけ、とても気になるものの、鶴岡に居住していないので静観していたのだが、しまいに落札決定された内容をみて愕然とした。自分は今、居住していなくても数年後、移り住むかもしれない、親戚、友人知人は多数鶴岡人だ。我慢が限界を超えてしまい、言ったところで何もならぬことは承知の上で思いを残しておきたくなった。

::ニュースを聞いておかしいと思ったこと::
 入札不成立が3度続いた鶴岡市の新文化会館建設工事で、同市は本体の工事費を20億円増額し、当初計画の2倍となる約80億円にする方針を固めた。22日の市議会臨時会に工事費などを計上した補正予算案を提出し、可決されれば9月下旬にも4度目の入札に踏み切る。膨れ上がる一方の建設計画には市民の一部から「一度白紙に戻し、再検討すべきだ」との声が上がる。
まるでどこかの国立競技場のようだ。


 2012年の市整備基本計画では新文化会館の工事費は40億円だった。
これは同じ姉島SANAAの手がけた金沢21世紀美術館と同じ坪単価。160万円/坪に近い。(17,363m2で84億円)それでも高いといわれたが、国際的観光都市金沢のこと。集客能力が桁違いに大きい。
しかし、13年末に実施設計が固まった段階で53億円に上昇。14年1月の第1回入札が不調に終わると、市は4月、約6億円増額した。ここまでは2011年を100として建築費指数の推移からみて20%以内の価格UPならまあ妥当な見直しと理解出来ます。って基準点が違ってます。59億円は40億円からみたらほぼ5割増しになってるのでもうここで相当おかしなことになっています。
 

入札は5月と6月にも行ったが、応札する建設業者がいなかったり、直前に辞退したりして不成立が続いた。人件費や資材価格の高騰が不調の主要因とみられる。
古い建物は壊してしまって、手の内を先に見せて交渉がまとまるはずが無い。私が施工業者でも次に価格が上がるのを待ちます。
 市は今回の補正予算案で一気に19億9000万円上積みし、工事費を78億9000万円に倍増させる。
これは足元をみられたに違いありません。20億円をただで竹中に差し上げたようなものです。述べ床7885m2で80億円=坪単価340万円の建物は見たことも聞いたこともない。

ニュースの表現の仕方でみると、この手続きがそもそも『入札』なのか疑問。業者が「私はこの金額で請負います」って札を入れて要件を満たした中で一番安いところに決定することでしょ? この建築工事にこれだけ掛かりますと言うのは業者なはず。高くなる理由を述べるのは業者だよね。 順番がよくわからない。

建設資材、人件費の高騰というけれど、国内中央で(海外の大きなプラント建設も)大きな案件を取り扱っていて、そんなことはない。建築指数は2011年を100として2015年は110から120の間です。そのうえでクライアントから「安く、安く」と買い叩かれる買い手市場です。
 
53億、59億と見積もって入札に誰も手を上げないというのは、誰が見積もっていたのですか? 順番がよくわからない。業者に見積もらしたのではないのですか? 市が見積もって予算はこれですって言ったら誰も手を挙げません。施工業者は「その価格では建てられません」と言い、次に価格が上がるのを待ちます。建てないと困るのは「市」だからです。 それよりも、地元業者が真摯な態度で本気で作ろうとしても作れない建築物は設計が悪いです。言い方を替えれば選考が間違っている。名の知れた建築家のブランドが欲しかったのか。

 買い手の「市」が交渉材料を先に自ら無くしてしまい「売り手市場」にしてしまっているから高くなったのです。
高くなっても合併特例債(70%の交付金付き)があてに出来るからまあいいや、それが使えるうちに決定しなくちゃ、ありきだったようです。
 

スーパージェネコンの登場代金が20億。
しかし、竹中なら最初の40億でこの建物を作れると思う。建築指数の120%を勘案して48億円 と、思うと皮肉ですね。



決まったことは動かせないにせよ、私が懸念することは以下です。







1.建物の目的以外の面積がいかにも広く、二つのエントランス、カフェに繋がる空間やアーティストラウンジなどそこに繋がる通路らしき空間がだだっぴろい。丸い楽屋事務室の周囲のぐるり回れる通路が必要か。多目的ホールがひとつ、広さの割に練習室2つ、それ以外に音を出せる部屋は無い。 湾曲した意味のわからない空間はまっすぐにし、100m2から300m2程度の練習室を複数作って市内の学校や団体に貸し出したらいいのに。

 音楽、演劇、ダンスなどを普段と違う場所「文化会館」で緊張感を持って練習することでレベルが上がる。「公開練習」のような場を作ることで盛り上げる。 コンテストなど発表の機会を増やすことでほんとの意味で文化的意欲の向上、舞台芸術の発展のアイデアは、ハードである建物と相乗効果を持つものと思う。良いきっかけになればいいのに、普段、多くの市民がアイデア次第で利用する空間がほとんどない。

RC+鉄骨造の建物寿命が50年ならみんなで使い倒すくらいの勢いで使った方が良い。そうでなきゃ建築費が悲しいほど高過ぎる。僕らの親しんだ古い建物だって40年じゃ短かすぎた。








2.建物の有効容積に対し、屋根、外壁の面積が非常に多すぎて建設費的にもエネルギー的にも無駄。断熱性能、設備設計で省エネを謳ってもその前に帳消しにしている。それを犠牲にしてまで採用したい「デザイン」か? 大体、このデザインで屋根の融雪ヒーターは長すぎて省エネに反している。ヒーターは合計何mの長さで何kWが消費されるか。


3.複雑な屋根形状の重ね合わせで漏水対策が大げさになる。屋根樋ヒーターの周辺、雪の積もった箇所と温度差が生じ、かつ、ヒーターはON/OFFするために膨張率が変化し「防水層が痛む、切れる」リスクが非常に高い。下の部屋平面に対して馬鹿でかい屋根が何枚重なっているか。
 一度融けた雪がヒーターのない所で氷点下の外気で冷やされツララになりませんか。屋根周長の長さがそのままリスクになりませんか。ツララが落ちたら超危険です。また、下の屋根を壊します。 屋根形状がシンプルであれば長さも短いし、ヒーターを横樋から立て樋まで連続し再結氷させずに排水可能。





4.複雑な形の立方体の集合で外側に鋭角的な入り隅が平面的にも断面的にも非常に多く、雨漏りのリスクがとても高い。さらに、屋根のケラバが大きく、強い北西の風で飛行機の翼のごとく風を集め、屋根の下の壁との接合部でさえ「入り隅」にしてしまっている。 温暖化で積雪量は減ったものの風の強さと方向は変わらない。むしろ突風の頻度は全国的に増えている。翼の揚力で上方にも応力が掛かる。めくれませんか。 西側の多目的ホールと搬出入室の外壁は数mの隙間で奥に向かって狭くなる鋭角で並んでいる。ここに強い風が吹き込んだら・・・外壁が2枚ここに必要か?



5.平面的、立面的「入り隅」に庄内の横風圧力が加わることと相まって、ますます雨漏りの原因になり易い。将来のメンテナンス/ランニングコスト高騰、増大の原因になります。
 丹下健三のデザインした「都庁」が雨漏りで泣いている。(30年間で1000億円の雨漏り対策費)原因は45度捻って載せた高層階と屋根の入り隅の複雑さです。方角1面のワンモーションであれば起こりえない雨漏り。




6.外からも室内から見ても鋭角的な箇所が多く、デッドスペースが多い。








7.舞台上部に設備用大空間を必要とするのはわかるが、30mの高さが必要なのか。失礼ながら人口10数万人の地方都市の文化会館でどんな舞台を行うのにその高さか。上げ下げする緞帳の高さはいくつあればいい。14mはない、前垂れの隠しの奥で緞帳は9mの高さだとして上げ下げ18m、仕掛けと構造物を勘案しても、断面図を見て通常なら22mで足りる。どう余裕をみても24mがいいところ。これで地元業者が施工技術がない、工事費が高い原因と言うなら5mでも下げるべき。見栄の5mは下記の理由で要らない。






8.30mのそこに吊るす音響設備、舞台照明、スクリーン・複数のバトン・反射板・各種幕・緞帳など舞台装置などのコストは80億円に含むのか。さらに膨らむことは無いのか。(含んでいないなら30mに見合う上記の装備はとんでもなく高いものになります。特に幕・緞帳などの布製品)


9.客席の隅々まで反射音を響かせる設計とのことだが、残響時間は何秒か?クラシックと現代音楽では楽器のエンベローブが異なるため、うまく中間の落としどころを狙わないと聞きにくいことになる。響けば良いわけではけっしてない。むしろ回数の多いと推察される現代音楽に合わなくなる可能性もある。
 
数万人が暮らす大マンション郡のおしゃれな「公民館」でROCKやJAZZをやるのだが、残響時間が長すぎてドラムもベースも台無しのところを近所に知っている。デザインだけ優先した結果だ。吸音材を貼っても付け焼刃で特定周波数の反射が消えない。この設計では平行面を持たないので固有共振周波数の心配はなさそうです。

ただ、バイオリンとドラムが両方きれいに聞こえなければならない。適度な残響と消音エンベローブ性能。折込済みの音響設計は理解できるが、今後発生する調整費も契約に含んでいるか、音響は一発では決まらず、カットアンドトライの作業になるので新たに負担増とならないか。


いまさら何を言っても、外野から声をあげても意味が無いのは承知のうえ、せめて「雨漏り」のリスクで市民に負担が無いように願いたい。きついことをたくさん書いたが、この中で少しでも良い方に再考できるヒントになることがあるなら書いた甲斐がある。誰も意に介さないならひとりごとのまま。

市民が素敵な舞台を見ることで心に豊かさと、若い人は夢の持てるような、夢に一歩踏み込むきっかけになれるような素晴らしい場所になって欲しいと思う。そして、ここに書いたことが全部杞憂に終わることを願う。それにしてはきついことを書いているが、東京に暮らす鶴岡出身の多くの人の共通の意見も書いている。

いや、ほとんど「ひとりごと」にしかならない戯言の類だが。



「部外者」と何度も書いたが、考えてみたらそうじゃないんですね。
「合併特例債」の利用が66億。その70%は国からの交付金です。
それはとりもなおさず我々の税金です。市の負担より国の負担の方が
多い。



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Posted by とーしろ at 12:00│Comments(2)日々是
この記事へのコメント
さすがエンジニア&音楽に詳しいとーしろ様、ずばりポイントを突いてますね!
山形は農業と観光の県ですが、道路や箱物に金を掛ける土建大国でもあります。
山形市近郊でも箱物や道路が乱立しています。
大きな病院や公共施設に大規模ショッピングモールなど、便利になったとは言え、車が無いと動きが取れないのも事実。
本題から逸れましたが、国立競技場と同じで計画の前面見直しが必要のようです。。。
Posted by 量産型ギムレット at 2015年07月21日 13:29
【量産型ギムレット様:なによりこちらは部外者です。寄付はしていますが税金は納めていません。

いろんな発表を読むかぎり、今から変更できないと思います。 機能と安全性能より先にデザインを重視されたんだと思います。多数決で決定したことは尊重されるべきかと。

決定事項の先にある懸念される問題は払拭されるべきと言いたいのです。ただ、それでもランニングとメンテコストが高くついたら反対してきた市民は黙ってないと思います。

昼も他県の実例を調べましたが面積単価で半額くらいが高い方の相場です。最初の予算はいかに的を得た金額だったか。

最終的に心配と関係なく運営がうまくいって、有効に使えばなによりです。
Posted by とーしろ at 2015年07月21日 14:03
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