2015年05月10日

黒川能 平成27年 例大祭 『序』

『 能とシャッター音 』

ゴールデンウィークの最後に庄内に来た理由は2月末の蝋燭能の記事に書いてある。
どうしても見なければいけない番組があったからだし、それを演じる(舞う)役者との約束
でもあった。


黒川能 平成27年 例大祭 『序』



黒川能 平成27年 例大祭 『序』





今回は改めて考えさせられることがあった。

黒川能の演能機会は大きく3つに分けられる。
1、春日神社例祭奉仕 「神事」 (王祇祭、祈年祭、例大祭、新嘗祭)
2、奉納 (羽黒山花祭り、庄内神社例大祭)
3、イベント (蝋燭能、水焔の能、他)


総合芸能である「能」は「舞い」、「謡い」(歌でもあり台詞でもある)、「囃子」(楽器でもあるが舞いと一体となる「間」や「気合、掛け合い」も含まれる)の全部を楽しむものなので、環境としては「静寂」が重要だろうと思う。役者と観客の双方にとって。
音楽ライブやコンサートは写真禁止がほとんどだ、多くの場合、著作権だと思うが、JAZZやクラシックで一眼レフの音を出したら放り出されるに決まっている。

しかし、一方で神社での演能は撮影料を納め写真撮影を許可していただいている現実もある。

ここで写真を撮る行為との問題が生じる。
静寂の中に一眼レフカメラのシャッター音は無粋であり、演能する役者、囃子方からすれば気をそがれる邪魔なものだろう。少なくとも上に書いた1番、春日神社の神事の場合は神に供える奉仕の気持ちで演じている時だ。舞台の最前列で『パシャッパシャッ』されたら嫌なものだろうと思う。自分も含め、反省すべきと思った。


一眼レフカメラは構造上、ミラーアップとフォーカルプレーンシャッターが機械的に動くので音が出る。メーカーやモデルに依らず、音は絶対消せない。ミラーレスカメラはミラーが無い分、大きさが小さい分、音は小さいがフォーカルプレーンシャッターの走る「コトリ」という音は出る。

音が消せる、あるいは出ないカメラはいわゆるコンパクトデジカメという分類の、比較的取り扱いの簡単なカメラに限られる。それらには機械的シャッターは無く、電子シャッターが付いている。しかしながら、それらのコンパクトカメラでは黒川能のような、写真にとって過酷な環境ではうまく撮れないケースが多い。光量が少ない、被写体は大きく動く、蝋燭の明かりは色温度が極端に低いなどなど。幸い、今回は比較的レンズが明るく暗さに強い、音の出ないPANASONIC LX3 を持っていた。 例大祭はまだ光量があるので「パナLX3」でも撮れるが、レンズ交換できないので限界がある。イベントの蝋燭能では色温度がそこまで合わせられない。


演ずる方からみてシャッター音が良くないとなれば、写真撮影を禁止するか、音の出ないカメラに限り認めるようにするなどルールを変える方が良いのではないかと思われる。重要なのは、演ずる人たちが気持ち良く舞台を務められることだ。


そうすると、1番、春日神社の神事において写真撮影料(前は2000円だったが今度3000円になった)との兼ね合いをどうするか、今までよりより具体的な制限事項を盛り込むなど再考する必要も出て来るかもしれない。


別な一面を考えれば、良い写真が世に出て黒川能の魅力を多くの人に知ってもらう一助になる場合もあるだろう。そういう積み重ねが保存会の運営のためにプラスになる面は少なからずあるとは思う。また、保存会から依頼したプロは音が出ても良くて、一般のカメラは音を発ててはいけないというようなことは不公平感が漂い難しい気がする。


自分もカメラを持ち込み撮りたい方だが、観る方も静かに謡から囃子の音を楽しみたい人の方が多いのだ。特に連写の音などはそういう人にとって邪魔モノ以外の何ものでもないだろう、とは思っていた。だから自分は音の小さいミラーレスカメラに替えたのだが、そういう程度問題ではなく、「音が出たら気が散る」という繊細な部分には気を使うべきだろうとは思う。もし、新たなルールが決まれば黙って守ろうと思う。




黒川能 平成27年 例大祭 『序』



素晴らしいシーンは自分の眼に焼き付ければ良い。人に伝えたければその記憶を言葉で伝えれば良い。伝えられた人はまた、自分の眼で見れば良い。






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Posted by とーしろ at 15:00│Comments(2)黒川能
この記事へのコメント
>素晴らしいシーンは自分の眼に焼き付ければ良い。人に伝えたければその記憶を言葉で伝えれば良い。伝えられた人はまた、自分の眼で見れば良い。

さすがとーしろさま、素晴らしいお言葉!
LX-7はシャッター無音出来るしF1.4なのでなんとかなるかな??
Posted by 量産型ギムレット at 2015年05月10日 20:43
【量産型ギムレット様:ありがとうございます。

ずっと、ずっと、気にしておりました。

音を大切にする芸能はもともと一眼レフのようなでかい音を発するカメラで場を乱してはいけないものだと思っています。

演ずる方も見る方も納得できる、すっきりできるルールが欲しい。
Posted by とーしろ at 2015年05月10日 22:23
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