2010年03月28日

義民が駆ける

藤沢周平を読み続けておおよそは読んだつもりでいても、出張の傍ら東京駅などで
(住まいの近所は本屋が全部つぶれました。漫画と雑誌しか売れないからです)
本屋に寄るとまだ読んでいないタイトルを見つけ、つい手にしてしまう。



「義民が駆ける」
天保11年(1840年) 庄内藩主8代 酒井忠器(ただかた)の時の三方国替えの際に
その理不尽な沙汰に抗い、勇気ある反逆を行った民百姓の話である。






話は、庄内、川越、長岡の三藩の藩主に対して、水野忠邦を筆頭とする「三方国替え」
を進める幕命が下りたことに始まる。内容は、荘内藩14万8千石の酒井忠器(ただかた)を
長岡へ、川越藩15万石の松平斉典(なりのり)を庄内へ、長岡藩6万8千石の牧野忠雅を
川越へ移封するという。

しかし、元もとの命令の発端が、財政難な川越蕃の大奥を通じた賄賂で成り立つ話ゆえに
、特に大きな損失を蒙る庄内蕃は承服しかねる話だった。庄内蕃は14万8千石といいつつ、
豊かな土壌の平野を持ち、実質20万石はあるはずだった、が、移封すれば石高が1/3に減る。
民百姓は移動するわけではないが今まで長きに渡って親しんだ殿様を失い、違う殿様の
新たな厳しい年貢取立てに不安を抱く。

国替えを命じられた庄内藩は、藩主酒井忠器、藩首脳、酒田の本間光暉、遊佐郷升川村の
佐藤藤佐(とうすけ)らが善後策を練る中、遊佐荘「玉龍寺」住職、文隣和尚をはじめ
庄内藩の農民たちは、「百姓と雖も二君に仕えず」と打ち首獄門を覚悟の上で、筵旗を
掲げて江戸に上り、諸大名や幕府役人に直訴を試みる。




・・・・幕命である三方国替えは変更になるはずはなかった・・百姓たちに焦燥感が漂う・・・
・・・・しかし、大逆転が起こる・・・・

当時の江戸町奉行は矢部駿河守だった。佐藤藤佐翁は取り調べで、三方国替えの間違いを
訥々と説明した。矢部駿河守はその訴えの誠実さに感激し、その口述書をとり閣議の席で大
きな声で朗読し、藤佐(とうすけ)の取調を停止、農民等に有利な裁決を下した。

三方国替えは中止、今までの領地は替えずに済んだのである。鶴ヶ岡城下でも酒田市中でも
民/百姓も安堵の酒を大いに酌み交わし喜んだ様子が地鳴りのように伝わる。
矢部駿河守は幕府の意向に従わなかったとして、天保13年、伊勢桑名藩松平家に幽閉され、
断食で抗議しながら逝去した。庄内藩は危機を脱し、その24年後の元治元年(1864年)
には、江戸市中警護の功績により2万7千石を加増された。

遊佐町江地の「玉龍寺」には其の碑があり、農民や矢部らの正義を貫いた行為に感謝し、
その勇気を讃えた「戴邦碑祭(たいほうひさい)」が毎年行われ、この幕府をも動かした庄内農民
の熱き血汐は、今に受け継がれている。


余の所には届いておらんようでもある。ワルイことも少しは好きである。


小説として「面白いからお奨め」とは言わない。けっして「面白く」はない。
人の名前が多く登場し、坦々と時系列で話が進み、エンターテイメントな部分は全く無い。

面白いのは、藤沢周平がこの本を書くにあたって、歴史を調べていて、我々が日本史を
学んだ先生の著書から大事な史実をつかんでいる点である。巻末の藤沢自身のあとがきに
名前が出てきたので改めてその先生を思い出した次第。

いつかのblogに紹介した 「名を変えよ 高野の奥の 女郎花」 と読んだ先生がそうである。



ここで、思う。先にblogに書いた「青春の門」などで常に物語の中に見え隠れするのが強きもの
に屈しない男の強さ、己を犠牲にしても弱きを救う英雄的な「おとこぎ」だったりするのだが、どちら
かというと北九州のそれ(血気盛んな男っぽさ)と、この史実に基づいた文章
から受ける庄内の民/百姓の勇気(肝の座った静かな反抗心)とはだいぶ性格
が違うようでもある。土地柄も地理的状況も影響しているかもしれない。
良し悪しではない。目立ちカッコイイのは九州の男っぽさだろう。庄内の民は寡黙で目立たない。

藤沢周平「義民が駆ける」を読み終えるかどうかの時に、青春の門の「再起篇」「挑戦篇」が届き、
異質なる「おとこぎ」に同時に接したから思うことなのだが・・・・はて・・・


同時期に読むと目立つ
藤沢周平の文章の端整、眉目秀麗
五木寛之の疾風のような展開の速さ





もうひとつ全然別なこと 
パナのコンデジで「iAモード」で撮るとモノクロのイラストでも「顔認識」が効くオモシロ。




やっぱり織江が気になるバレバレ・・・・・ポチッとな


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