2009年07月12日

JBLとの遭遇

オーディオ云々する前に、音楽を聴く環境から。


JBLとの遭遇


就職した最初は寮生活で、その建物はRC造(鉄筋コンクリート)だった。
床と天井の上(スラブという)はコンクリートでさらに隣りの部屋との境もコンクリートだ。当時そんなことは気にしていなかったが、気に入ったレコードを適度な大きさの音(これが難しい)で楽しむくらいはそうそう人に迷惑を掛けずに済んでいたのだと思う。ただし、低音をがっちり聴きたくて音量を上げたりすれば話は違ってくる。

東京に引越し安アパート暮らしをすると、木造の建物で軽い素材の壁。近隣と無用なトラブルを起こしたくないという自発的防衛本能が働く。判断のこつがわかってくる。自分の部屋が静かな時、隣のどんな音が聞こえてくるかで、おおよそ掴める。テレビの音、ドアの開け閉め、目覚まし。ひどいのはうがいの音まで聞こえる。こういうところではステレオを鳴らすのはあきらめた方がいい。

で、何を言いたいかというと、イイ音を聴くには人に迷惑のかからない環境が整っていないと無理だということ。RCのマンションなら多少の音は大丈夫だが、当時の生活はRCのマンションに住める状況ではなかった。そんなことで、スピーカいじりが好きといってもおのずと10cmどまりで、それ以上の大きな物には手を出せなかった、というのが正直なところ。パイオニアPE-101もFOSTEX FE103?もほんとの実力はRCのマンションでクレームをくらうくらいの音は出せるのだから、なおさらだ。

たまに読むオーディオ雑誌で高級な装置の写真をめでる程度のものだった。


JBLとの遭遇


JBLとの遭遇



そのころ、アンプとチューナーを、就職してから使っていたパイオニアの8800から、LUXKITの小型のものに替えた。出力の大きなアンプは必要なかったし、サイズも小さな方が良かったし。

バンドや楽器の方に気持ちがいっていたこともある。ストラトはフェルナンデスからUSA Fenderに代わる。エフェクターやらドラムマシン、MRTなどに金がかかる。A・SAXまで手を出す始末。電話の権利は高かったし、都会暮らしなのに車も持っていた。



そんなこんなで使ってる10cmのスピーカより大きなものなんぞ求めてもいなかったし、買う気などさらさら無かったのだが・・・ある日、出物の楽器が無いか近所の質屋を覗きとんでもない展開になっていく。

楽器屋で見ることの無い珍しいホーナーの鍵盤が目に入り・・・「おじさん、ちょと鳴らしてイイ?」 「ああ」・・シンセでは出ない結構イイ音に気持ちが傾くも、 鳴らない鍵盤があり「おじさん、これってなおせるとこあるの?」「珍しいやつだからだめなんじゃねーか」 衝動買いにいたらず。


振り向いたその先に普通の大きさの茶色のウオルナット仕上げのブックシェルフが目に入った。サンスイの箱に似ているが木彫り格子じゃない。 「去らんネットはずして見せてもらっていい?」 「ああ」・・・写真で見覚えのあるヘアラインシルバーのフレームに白いコーン・・わくわくひょっとして・・アルミの砲弾型イコライザーのホーンツイータ・・わくわく・・。

・・・・ありゃまぁ・・・

紛れも無くJBLのLE8Tと075だ。「おじさん、これなんぼ?」 「○万円」 「鳴るんだろうね」 「音出なかったら返していいよ」
JBL LE8T+075 N7000付き バスレフ 箱もしっかりしていて程度は上々、・・・静寂・・・腰が引ける・・・おじさんの顔を見る・・・清水の舞台からダイビングする  「買った」

あーあ、やっちまった

そそくさと部屋に持ち帰り、繋ぐ、・・・・最初、片方音が出ず・・・返品か・・衝動買いを悔やみ、元に戻すなら今だ・・・の前にスピーカはずして内部配線のはずれに気が付き直す。ユニットは無事だった。やた! 直っちまった・・ 衝動買いを反省する機会を失った。これが自分の初JBLだった。

安アパートで鳴らせないんじゃなかったの? 忘れちゃいないんだけど、思い出さない。 撫で回すように静かに聴くも、やはりJBLの力強さと腰、ばね、色気のある音は感じられた。求めていなかったのに思いがけずの価格で手に入ったJBL、それでもしばらく「おしんこ定食」でしのぐ。憧れのものを手にするということは犠牲も必要なのだ。


従兄弟の家に持って行き、FOSTEX FE203?のバックロードホーンと鳴らし比べ。音の出方が違うので優劣は付けがたし。LE8Tは20cm口径にしては小さい(実質18cm)のユニットだが、よくはずむ十分な低音再生能力がある。それでいてピアノやヴォーカルの中域の生々しさがイイ。さすがに高域はサイズの割りに大きな径のヴォイスコイルのせいか、ツイーター無しではわずかに不足する。



当時の写真は無い、カメラを持っていなかった。  いや、今撮ろうと思っても箱とLE8Tはあっち、075とネットワークはこっちで離れ離れに置いてあるので今は撮れない。ユニットの裏にSANSUIシールが貼ってある正規輸入品だった。



その25年後、別の設計で試行錯誤の時のユニット単体の写真はこれ。


O75

JBLとの遭遇


LE8T

JBLとの遭遇


ネットワーク N7000

JBLとの遭遇


ただし、JBL製ネットワークはあまりほめられたものでは無い。コンデンサもコイルも驚くほどちゃちい。イグゼ製のこれ(今使ってる500Hz用のもの)の方が断然良い、って多くのオーディオオヤジはもっと良い部品を使ってるので自慢にならぬが。


JBLとの遭遇


ほんとのほんとはいろんな工業生産品の趣味は国産派なのだが、ことエネルギー変換器(トランスデューサー)というのはガイコツ製に適わない面がある。レコードカートリッジ、スピーカーユニット、マイクしかり。どこかの時点では、ある面では、追いつき追い越した面もあるだろうけど、日本製品の良さはそれなりに理解しつつも、未だに追いつけないものも確かにある。 



「JBLのすべて」という本より  (最初のJ・B・ランシングの写真も)

JBLとの遭遇
075が作られたのは1957年  
今でもシンバルを再現する世界最高のツイータと思ってる


JBLとの遭遇
LE8Tが作られたのは1962年 
また作ってくれないかね、アルニコでなくても



ジェームズ・バロー・ランシング が素晴らしいスピーカーを作ったのが80年も前のこと。JBL社を興し、紆余曲折を経て会社の存続のためにアボガドの木に首吊り自殺したのは60年前。見たことも無い東洋の島国で己の作品が愛されていようとは努々思わなかっただろう。


しかし、せっかくイイスピーカーもいくらも聴かずに、その後の結婚子育て餌やり多忙を極める仕事安い給料アパート暮らしに翻弄され、長きにわたり鳴らすことなく日本の多湿の環境にエッジが朽ちていくのでありました。しかし、かかし、JBLとの付き合いはこれが始まりになるのでした。やれやれ。(もう腰が痛い)


素晴らしい拡声器を後世に残してくれたジェームズ・B・ランシングの墓前に・・・ポチッと!
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Posted by とーしろ at 08:39│Comments(3)こしらえる
この記事へのコメント

こんにちは。
「おしんこ定食」のくだり、泣かせますね。
私も学生の頃、半額セールの3401Bを衝動買いし、苦労したのを思い出しました。
5〜6年後、ウレタン・エッジがボロボロになってしまい、修理の方法もわからず、保管していましたが、数年前、「家庭内スペース問題」解消のため、泣く泣く処分しました。
今はVictorのウッドコーンスピーカーのミニコンポです。
Posted by かず at 2009年07月12日 11:54

やっとJBLが出てきましたね。笑

075もLE8Tも欲しいのですが、未だに入手できず、アルテックに走ってます。

自分が使ってるのはウファーもドライバーもフェライトです。泣

丁度注文した時がアルニコからフェライトへに切り替わった時で、すでにアルニコの在庫は無く、しぶしぶフェライトのを買った覚えがあります。

075いいなぁ。。。。
Posted by kaz at 2009年07月12日 16:29

【かず様:みなさん似た様な思い、経験されてますね。エッジに関してはずいぶん苦労しましたが、今は販売しているところがあり、LE8Tから38cmまで8SETくらい直しました。ひとつは全アセンブルを接着したものがあります。

WOOD CONEスピーカーもユニットが買えますね。VICTOR以外でも8cmから17cmまであるようです。





【kazさま:まったくどういうきっかけがころがっているかわかりません(笑) 子供店長の声で「わしはこんなもの、欲しくはなかったのじゃ」 ってところでしたが、秋葉原などではありえない価格についつい。

075はその後、フラム無しジャンク品に新品ダイヤフラムで組んだものもあります。砲弾アルミも磨いてきれいです。
Posted by とーしろ at 2009年07月12日 17:05
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